大脳半球の左右差
ヒト特有の大脳半球の左右の機能についての学説は、古い時代のてんかん患者の治療のために行った、脳梁の切除や手術中に脳に電気刺激などを行った場合の観察記録から推測された仮説が多い。 それらの少ない観察例から拡大解釈されたもの、その拡大解釈をさらに拡大解釈したり、歪曲された俗説が非常に多いので注意が必要である。
しかしながら、大脳左半球に言語野が有ることや、右半身の制御を左半球、左半身の制御を右半球が行っているのは事実である。(言語野については非常に希だが右半球に存在する人がいることも確認されている)さらに、ヒトの大脳では左半球のほうが右半球より若干大きいことが判っている。 また、脳専門医の中には、左右の脳半球に機能分布の違いを認める医師もいる。病巣や事故によって損なわれた脳の部位と、外から見える機能欠損の関連性に経験則があてはまるからである。 それらによれば論理的思考についてあるていど重要な機能が左半球にあるのは確かだが、例えばカナダのペンフィールド医師の姉の報告例などからわかるように、右大脳の前頭野が損なわれても、行動を順序立てて計画する(例えば料理など)能力などが失われることがわかっている。
しかし、現時点ではヒトの大脳半球の左右の機能についてのデータは、あくまで事故や病気などで得られた症例を観察した程度のものであり、脳という器官の複雑性をかんがみたばあい、ある能力について、どちらかの半球だけが機能しているといえるほど単純なものではなく、またそれを裏付けるデータもない。 厳密にどの機能が左右で分化しているのか、どこまでが個人差の範疇であるのかなどは現在の所は一切不明である。
大多数の研究者が特定の精神機能の中枢とみなしている領野は今のところ、末梢との神経接続が解剖的に調べられている初期知覚領野・運動野を除けば言語野しかない。さらに左脳と右脳がそれぞれ論理的思考・創造的思考を処理し、もう片方がそれを担当していないという明確な証拠や実験データはない。脳機能局在論も参照のこと。